ミスマッチはなぜ起こるのか?

2011.11.04

「九〇年代末の就職氷河期あたりには、すでに学生の姿勢に変化があらわれていました」こう語るのは、リクルートーワークス研究所の豊田主任研究員だ。同氏は一九八〇年代から企業数百社の採用計画に携わり、その後、「就職ジャーナル」などの編集長も長く経験し、日本の新卒採用の変遷をリアルタイムで見続けている。「企業の厳選採用化や、ネットの普及による情報量の増大などが理由です。特に後者は企業側にも影響を与え、それまで見えない部分で行われていた採用活動をオープンにする企業が増え始めました」。

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特定の大学のみに絞ったリクルーター制などでこそこそやっていても、選考の進み具合や試験内容など、すぐにネット上に流出してしまう。企業としては、完全公募制に移行し、広く門戸を開かざるをえなくなったのだ。そのためのツールとして、エントリーシートが普及したのもこの頃だ。つまり、全員が同じ土俵で、同じ基準で評価されることになったわけだ。「その結果、学生は偏差値や性別などとは無関係に、明確に二つのグループに分けられるようになりました」。一つは、明確なキャリアプランを持ち、そのために努力し、厳選採用に対応して正社員としての地位を獲得できるグループ。もう一つは、「ただなんとはなしに」有名な企業ばかりに応募し続け、なかなか内定の取れないグループだ。前者は仕事というものに対してきわめて高い意識を持つが、後者は一九九〇年代の学生と比べて大して変わっていない。少なくとも“就職”という社会人の始発駅の段階では、前者のグループのほうがずっと優秀だと思える(実際、採用する側としてもそういう評価だ)。ただし、その優秀なグループには同時に欠点もある。彼らは就職までのプロセスにおいて、あまりにも「仕事に対する意識」が高くなりすぎているのだ。その結果、彼らが入社後、希望していた業務と実際に割り振られた業務にギャップがあった場合、強烈なフラストレーションを抱え込むことになる。先のH氏のように、「かばん持ち五年、下積み一〇年」というような環境に耐えるような免疫が、相対的に低くなっていると言えるだろう。たしかに、「なんでもやります」的な就職活動で入社した先輩たちにとって、「自分かこの会社に来たのはOOをやるためだ」と言ってのける後輩はわがままかもしれない。ただそれは、企業の厳しい選考を勝ち残るために必要な進化の結果だということは明記しておきたい。