「職人の手仕事」による製造の限界が強調

2011.06.06

「希少性」も守られた。ブームになると「職人の手仕事」による製造の限界が強調される。オーダーには2年待ち、3年待ちというスタイルが保たれ、さらには受付を停止することでかえって人気を高める。時期にもよるが、直営店では現在でも異常なほどの品薄感だ。このため、「見つけたら、即買い」といった風潮が生まれ、50万円以上の鞄が「ほんとうはあの色のほうがいいんだけど」などと、ぼやかれながら売れていく。なお上得意はこの限りではない。顧客はきっちり差別化され、顧客限定のパーティなどでは普段店頭に出ることのない鞄などが陳列され、飛ぶように売れている。店舗数についても、数をやたらに増やさずに質の向上をめざすと明言されている(「日経流通新聞」1990年11月29日)。ブランドの原点の維持に加え、現地密着型の時宜を得た広報活動が、短期的な業績拡大につながっている。斎藤峰明エルメス・ジャポン社長は、デュマ時代の様々な新製品の投入もバランスよく業績を支えていると強調する。老舗プレミアム・ブランドとて、常に好調であるわけではない。短期的な景気や社会情勢の変動に流されず、原点に依拠しながら長期的な視点を保つ。それでいて暖簾にあぐらをかくこともしない。これまでの蓄積と柔軟な対応で、多様なニーズに応えるだけの厚みがある。これこそ伝統のなせる業であり、またエルメスがデュマの「個人商店」だからこそのメリットでもあるのだ。