医療における伝統的な意思決定の仕組みをそのまま是認することが次第に困難になりつつあることは、癌の告知や尊厳死の問題からもうかがわれますが、その端的な一例は障害者の自立生活(independentliving)運動に見ることができます。身体障害者のリハビリテーションは第二次大戦以来目覚ましく進歩し、時には奇跡的ともいえる成果を誇っています。しかし、どのような医療にも当鋏のこととして、成功する場合と成功しない場合とがあります。リハビリテーション医学ではいろいろな機能訓練を積み重ね、またいろいろな補助具を工夫して、まず他人からの援助なしに日常生活を自力で行うことを中間目標とし、ついで産業社会に復帰するための職業訓練の課程に入ります。ところが一部の重度障害者は、このようにあらかじめ準備された課程を一段一段よじ昇ってめでたく社会に復帰するというわけにはいきません。つまりしばしば脱落者となるわけです。しかし、このような過程を踏んで型通り「自力更生」できない障害者でも、身の廻りの世話をしてくれる人がおり移動を介助してくれる人がおれば、頭脳的作業では他人にひけをとらないという場貪が少なくありません。